4月8~9日の2日間,ウェスティン都京都コスモスルームにて,International Conference on Market Quality, Trade and Dynamics が開催されました。特別推進研究「経済危機と社会インフラの複雑系分析」の一環として、邦題「市場の質、貿易と経済動学」と題して開催された国際会議は、数多くの質問と議論が交わされ、盛況かつ熱気ある会議となりました。
April 8 (Monday), 2013
13:30~15:30
Chairperson: Michihiro Ohyama (Keio University)
On the Value of Small-Scale GE models
報告者: Ronald Jones (University of Rochester)
最初のセッションでは,ローチェスター大学のロナルド・ジョーンズ教授による,”On the Value of Small-Scale GE Models”の報告が行われました.長年の間,国際経済学の第一人者として活躍してこられた学者として,国際経済下での一般均衡における小規模の価値について,この半世紀の国際経済学の脈々とした発展の歴史をふまえ,非常に含蓄のある発表をして頂きました.
Accumulated Budget Deficit of Japan and Fiscal Policy Rule
報告者: Naoyuki Yoshino (Keio University)
吉野直行先生は,資金循環表を用いた日本の資金循環の特徴に関する報告を行い,分析の結果,多くの負債をカバーする国債の供給が抑制されるべきであり,また,日本の資本は日本経済の回復のために民間の資本ストックの蓄積に向けられるようにするべきであるとの見解を示されました.
Prof.Jones Prof.Jones&Oyama Prof.Yoshino
15:50~17:30
Chairperson: Harutaka Takahashi (Meijigakuin University)
Equilibrium under Ambiguity
報告者: Nicholas Yannelis (University of Iowa and University of Manchester)
Nicholas Yannelis 先生の報告では,経済主体の選好がGilboa-Schmeidar 型のマキシミンである状況で,曖昧さのある非対称情報経済の事前のマキシミンコアの概念の特徴づけに関する報告が行われました.その中で,マキシミン均衡と呼ばれる非協力の概念を導入するとともに,マキシミンコアに対する非協力の基礎付けが提示されました.
Asset Bubbles in a Small Open Economy
報告者: Takashi Kamihigashi (Kobe University)
上東貴志先生は,小国開放経済におけるバブルに関する報告をされました.一般的にバブルに関する研究は世代重複モデルや異質的な主体を仮定したモデルで行われますが,上東先生は,横断面条件を満たす代表的個人モデルでバブルを扱い,より多くの市場が開放的になれば,それだけバブルが生じやすくなり,全市場が完全に開放的であれば資本逃避すらも生じるということを示されました.
Prof.Yannelis Prof.Kamihigashi Prof.Takahashi
April 9 (Tuesday), 2013
9:30~11:10
Chairperson: Junichi Itaya (Hokkaido University)
Cross Border Nominal Assets and International Monetary Interdependence
報告者: Andy Neumeyer (Universidad Torcuato di Tella)
Andy Neumeyer 先生は,世界経済の一般均衡モデルを用いて,予期しない金融ショックに対する経済への影響についての分析を報告されました.カリブレーションを行いアメリカの金融ショックを推測し,そのショックに対するアメリカ、日本、ラテンアメリカの富や消費,価格,為替に対する影響を数量的に算出しました.その結果,アメリカの予期しない金融ショックは日本やアメリカ,ラテンアメリカの富の大きな再分配を引き起こしたことが、報告されました.
Perpetual Leapfrogging in International Competition
報告者: Yuichi Furukawa (Chukyo University)
歴史を通じて,イノベーションを先導する国家は絶えず入れ替わっている.古川雄一先生は,このような技術リーダー国の時間を通じた入れ替わる,いわゆる「リープフロッギング(蛙飛び)現象」が繰り返し発生するメカニズムを説明するモデルを報告されました.
Prof.Neumeyer Prof.Furukawa Prof.Itaya
11:20~13:00
Chairperson: Atsushi Kajii (Kyoto University)
Auction Theory with Income Effects
報告者: Krishnendu Dastidar (Jawaharlal Nehru University)
Krishnendu Dastidar 先生は,各入札者(消費者)の所得が異なるオークション問題について報告されました.First-price auction,Second-price auction,All-pay auction という3つのオークション形式の下で,対称ベイジアンナッシュ均衡が存在する条件や所得水準の違いによる影響が示されました.
Impact of Financial Regulation and Innovation on Bubbles and Crashes due to Limited Arbitrage: Awareness Heterogeneity
報告者: Hitoshi Matsushima (University of Tokyo)
松島斉先生は,合理性がコモン・ノレッジではないような場合における戦略的裁定取引者の間のタイミング・ゲームをモデル化し,裁定活動に限界が存在するために引き起こされるバブルや恐慌に対して,金融規制と技術革新がおよぼす影響についての分析を報告されました.
Prof.Dastidar Prof.Matsushima
14:30~16:10
Chairperson: Fumio Dei (Kobe University)
Dynamic Persuasion
報告者: Takakazu Honryo (University of Mannheim)
本領崇一先生は,動学的説得モデルに関する研究を報告されました.情報を提供することと,提案を受け入れるかどうかの意思決定を遅らせることに費用がかかる中で,情報提供者がいつ説得をあきらめるか,また意思決定者がいつ提案を受け入れるかどうかを効率的に決定する動学的コミュニケーションゲームの結果として生じる均衡についての分析が説明されました.
Trade, International Courts and the Settlement of Disputes
報告者: Peter Rosendorff (New York University)
Peter Rosendorff 先生は,PTA(特恵貿易協定)への加盟が政治指導者の生存に与える影響について述べられました.PTAが政治指導者の生存に与える影響の度合いは民主主義国家と独裁国家によって異なり,前者の方がPTA加盟でより大きな恩恵を得るとの見解を示されました.
Prof.Honryo Prof.Rosendorff Prof.Dei
16:20~17:10
Chairperson: Kazuo Nishimura (Kobe University)
Ruin Probabilities in Some Dynamic Models
報告者: Mukul Majumdar (Cornell University)
最後のセッションでは,コーネル大学のMukul Majumdar 教授により,”Ruin Probabilities”の報告がおこなわれました.Majumdar 教授は数理経済学・経済動学の分野で第一線で活躍されてきた方で,破産確率に関するきわめて興味深い発表がなされました.
Prof.Majumdar Prof.Nishimura Prof.Yano
プログラム
日時:平成25年4月8日(月)~9日(火)場所:ウェスティン都京都コスモスルーム主催:Institute of Economic Research, Kyoto University,
Market Quality Research Project (JSPS Grant #23000001)
■ April 8, 2013
13:30~15:30
Chairperson: Michihiro Ohyama (Keio University)
Ronald Jones (University of Rochester)
“On the Value of Small-Scale GE models”
Naoyuki Yoshino (Keio University)
“Accumulated Budget Deficit of Japan and Fiscal Policy Rule”
15:30~15:50
Coffee Break
15:50~17:30
Chairperson: Harutaka Takahashi (Meijigakuin University)
Nicholas Yannelis (University of Iowa and University of Manchester)
“Equilibrium under Ambiguity”
Takashi Kamihigashi (Kobe University)
“Asset Bubbles in a Small Open Economy”
17:50~20:00
Reception at Hiei
■ April 9, 2013
9:30~11:10
Chairperson: Junichi Itaya (Hokkaido University)
Andy Neumeyer (Universidad Torcuato di Tella)
“Cross Border Nominal Assets and International Monetary Interdependence”
Yuichi Furukawa (Chukyo University)
“Perpetual Leapfrogging in International Competition”
11:10~11:20
Coffee Break
11:20~13:00
Chairperson: Atsushi Kajii (Kyoto University)
Krishnendu Dastidar (Jawaharlal Nehru University)
“Auction Theory with Income Effects”
Hitoshi Matsushima (Tokyo University)
“Impact of Financial Regulation and Innovation on Bubbles and Crashes due to Limited Arbitrage: Awareness Heterogeneity”
13:00~14:30
Lunch
14:30~16:10
Chairperson: Fumio Dei (Kobe University)
Takakazu Honryo (University of Mannheim)
“Dynamic Persuasion”
Peter Rosendorff (New York University)
“Trade, International Courts and the Settlement of Disputes”
16:10~16:20
Coffee Break
16:20~17:10
Chairperson: Kazuo Nishimura (Kobe University)
Mukul Majumdar (Cornell University)
“Ruin Probabilities in Some Dynamic Models”