秋らしい涼しさがようやく感じられるようになった10月14日,千葉経済大学にて,Market Quality Research Project Workshop “Global Economy In Turmoil”が,IEFS Japan,先端経済理論の国際的共同研究拠点,本プロジェクトにより開催されました.
Global Economy in Turmoilと題した本会では,国内外からお招きした7名の先生方に研究報告をしていただき,市場の質をキーワードに,介護や環境といった現代の諸問題に関する経済学的な検討を行いました.
◇Hiroshi Fujiu: “Two-Sided Transfers from Adult Children of Elderly Persons”
Prof.Fujiu
藤生裕先生は,介護を受ける老人とその子であり介護を行う成人の関係だけでなく,既存の研究ではあまり注目を集めていなかった,成人とその子の関係が老人介護に与える影響についての報告をされました. 実証的にも,命題がデータと整合的であったことも合わせて報告されました.
◇Fumio Dei: “Discrete Demand Shift Dumping”
Prof.Dei
出井文男先生は, 2国の貿易のモデルを用いて安すぎる海外製品の参入によって輸入国の厚生が低下する可能性を指摘されました.さらに,データを用いて裏付け結果を示されました.会場からは様々な論点が提供され,活発な議論が行われました.
◇Jiawei Chen: “How Do Switching Costs Affect Market Concentration and Prices in Network Industries?”
Prof.Chen
Jiawei Chen先生は,消費者が企業間を移行する際に発生するスイッチングコストや外部オプションの質との関係等を分析し,ロックインされた消費者の行動について報告されました.また,得られた結果は今後のネットワーク産業に関する政策的含意に富んだものであると指摘されました.
◇James R. Markusen: “Per-Capita Income as a Determinant of Cooperative and Non-Cooperative International Trade Policy”
Prof.Markusen
James R. Markusen先生は,環境の質の改善のための費用負担に関して途上国が優遇される理由を,利他精神によってではなく,国民の生産性が異なる2国のモデルを用いて,経済学的に説明されました.
◇Hodaka Morita: “Choice of Product Architecture and Labor Turnover”
Prof.Morita
Hodaka Morita先生は,製品開発においてどのような性質のアーキテクチャを採用するのが望ましいかを, 消費者の製品品質に対する選好を考慮したうえで分析した理論的結果を実証的結果と合わせて報告されました.
◇Rui Ota: “‘Law of Rising Price’ in an Imperfectly Competitive Declining Industry”
Prof.Ota
太田塁先生は,衰退産業において需要減少に伴い需要曲線が時計回りにシフトすることでU字型の平均費用曲線を持つ企業の製品価格が上昇するというメカニズムを理論的に説明されました.さらに,データを用いた実証結果を示され,一部地域でこの理論を支持する結果が得られたことが報告されました.
◇Makoto Yano: “Price Competition or Price Leadership”
conference
矢野誠先生は,現代の経済学において,良い市場を,高質な財が高価で低質な財が安価で共に取引される,より効率的な市場と定義し, そのような市場で実現される望ましい価格のあり方を検討していくための足掛かりを提示されました.
time Speaker Title
9:50-10:05 Hiroshi Fujiu and Makoto Yano
Opening Address
10:05-10:50 Hiroshi Fujiu
Chiba Keizai University Two-Sided Transfers from Adult Children of Elderly Persons
11:00-11:45 Fumio Dei
Kobe University Discrete Demand Shift Dumping
13:00-13:45 Jiawei Chen
UC Irvine How Do Switching Costs Affect Market Concentration and Prices in Network Industries?
13:55-14:40 James R. Markusen
University of Colorado, Boulder Per-Capita Income as a Determinant of Cooperative and Non-Cooperative International Trade Policy
14:50-15:35 Hodaka Morita
Australian School of Business, UNSW Choice of Product Architecture and Labor Turnover
15:55-16:40 Rui Ota
Chiba Keizai University ‘Law of Rising Price’ in an Imperfectly Competitive Declining Industry
16:50-17:35 Makoto Yano
Kyoto University Price Competition or Price Leadership