「日の丸ジェット」,運航の形式証明の取得コストの結果,断念
ついえた「日の丸ジェット」 露呈したノウハウ不足
2/8(水) 7:09配信, Jiji.com
という記事を読みました.これから大規模な技術革新に従事していかなくてはならない日本にとっては大変残念なことです.開発失敗の原因として,『一定の水準の機体を開発できた」といい、技術面での成果があったことも強調。しかし、運航に必要な型式証明の取得手続きに関する理解や経験が不足し、子会社の三菱航空機は商用化にこぎ着けることができなかった』ということが協調されています.このような問題が起きるのは,アメリカやヨーロッパの規制の基準を我が国の政府や企業がきちんと理解していないところからきているのではないかと思います.
私は数年まえ,本領崇一さんとの共同研究 Idiosyncratic Information and Vague Communication (American Political Science Review, 2021) を執筆する最中に,ボーイング737の事故との関連で,アメリカやヨーロッパの事故調査基準や手順を詳しく勉強したことがあります.それだけでも,素人には大変な手間だったのですが,民間航空産業を支える規制が大変に複雑で難しいことがわかりました.航空関連でなくても,安全基準にかかわる規制をクリアするための時間と労力は大変なものがあります.
今回の件は,事故とは直接関係ないのですが,アメリカやヨーロッパの規制をクリアするためのノーハウの蓄積が極めて大切なことを教えてくれます.技術面ではよくできたが,形式証明の手続きが難しすぎたという現象は我が国が長年にわたって抱えてきた問題です.技術を作ることに目が行き,技術の使い方の研究に十分な予算をかけていない,もっと広く言うと,理系偏重の予算編成となり,文系的要素に十分な予算(人や資源)が使われていない結果と思います.
私が政府ならば,そうした規制を通すために必要な調査研究に,大規模な予算をつけたいところと感じます.